実施できない範囲を含む特許について
特許庁の審査官殿には、特許査定する場合でも、発明が実施できることを保証する義務はありません。それどころか、発明を実施できない範囲が含まれている場合には、審査官殿は原則として拒絶理由においてそれを指摘すべきではないと私は考えます。発明が原理的に間違えている場合には拒絶理由でそれを指摘してもよいと思います。しかし、補正や再出願により実施可能な発明に修正することができる場合に拒絶理由においてそれを指摘すると、審査官殿が発明者となってしまいます。例えば、拒絶理由を見た元の発明者が再出願すると、冒認出願となるおそれがあります。特許になったことで安心してはいけません。
良く知られているように、2019年9月にアスタリスク社はユニクロのセルフレジに対して特許権侵害訴訟を提起しました。訴訟対象の特許は特許6469758号です。以下では、この特許を本件特許といいます。その後、この特許権はNIP社に譲渡されました。これに対し、ユニクロの親会社であるファーストリテイリング社は本件特許発明はその出願時に公知であった(新規性無し、進歩性無し)として争いましたが、2021年12月にNIP社と和解しました。和解条件は不明です。
しかし、ユニクロのセルフレジについてはインターネット上に複数の口コミが存在します。それらの中に、セルフレジの外のRFタグを読み取った事例について4件の口コミがあります。私はこれらの口コミを見た時に驚きました。これらの口コミが正しければ、ユニクロのセルフレジは、本件特許公報の明細書の段落【0030】に記載されている「RFタグとの交信領域が収容部とその上方に制限され、読取装置の周りにある商品PのRFタグのタグ情報を誤読してしまうといった問題が生じない。」という効果を有していないことになります。つまり、ユニクロのセルフレジは、本件特許発明の効果を有していないことになります。これは、このセルフレジが本件特許を侵害していないことを意味します。
ここをクリックすると、セルフレジの外のRFタグを読み取った事例の口コミ4件と、セルフレジの中のRFタグを読み落とした事例の口コミ2件の説明をGoogleドライブからダウンロードすることができます。
また、YouTubeに次ぎの投稿がされています。
https://www.youtube.com/watch?v=gj3E8YmLkv8
【誰でもわかる!】ユニクロ(UNIQLO)無人レジICタグ(RFID)の仕組み
この投稿の5分30秒~7分で、以下が説明されています。
・RFIDが使用している周波数は900MHz帯である。この周波数は携帯電話などではプラチナバンドと呼ばれており、障害物を通過し、遠くまで電波が良く届くことが知られている。
・RFIDで使用している電波の電力は最大250mWであり、WiFi、無線LANの送信電力も最大250mWである。
この説明が正しければ、RFIDリーダライタのアンテナの電波が強い場合、ユニクロのセルフレジはその外部のRFタグを読み取って当然です。その原因として、(1)天井における電波の反射、および(2)RFタグ読取装置上部の開口周縁での電波の回折が考えられます。私は、これらを解決できる発明について特許を取得しました。特許番号は特許7429399号です。
私は、RFタグ読取装置について特許7429399号の他に2件の特許(特許7280583号と特許7381032号)も取得しています。
これらの特許番号をクリックすれば特許情報プラットフォームの該当ページが開きます。また、以下をクリックすると、Googleドライブから私の3件の発明の説明をダウンロードすることができます。
(1)3番目に特許になった特許7429399号に係る発明の請求項1に記載の発明
(4)3番目の特許(特許7429399号)の請求項11に記載の発明
侵害訴訟の経緯からユニクロのセルフレジはアスタリスク社の特許発明に係る読取装置を含むと考えられます。そうであれば、アスタリスク社の特許発明は実施できない範囲を含むことになります。アスタリスク社の特許の明細書と図面には上記(1)と(2)による誤検出を防止できる技術は記載されていません。このような場合、その特許発明は、発明が未完成であること(特許法29条1項柱書違反)、および明細書と図面が発明を実施できるように記載されていないこと(特許法36条4項1号違反)という無効理由を有すると私は考えます。
私の特許発明の実施を希望される会社にこれらの特許権を譲渡させて頂きます。私の特許発明を実施したい会社からの連絡をお待ちしています。ただし、私の特許発明に係るRFタグ読取装置は試作・実証されていません。この点はご了承下さい。
2024年4月30日 追記
特許6469758号の分割出願(特願2019-79934号)に係る特許7470953号に対して本日異議申立てしました。申立て理由は未完成発明(特許法29条1項柱書違反)と記載不備(特許法36条4項1号違反)です。本件特許が取消決定になれば、他の6件も拒絶・無効理由を有することとなります。
異議申立ての審理は、特許掲載公報の発行日から6ヶ月経過後に始まります。結果が出るまでには発行日から1年以上かかると思います。それまで待てない人がいるならば、異議申立ての書類一式をGoogleドライブで公開します。電子メールでその旨ご連絡下さい。
2024年5月12日 追記
最後に特許になった特許7429399号に係る発明は4月18日にアメリカに出願しました。出願番号は18/638,704です。明細書は自分で翻訳しました。また、アメリカの代理人に依頼せずに自分で出願しました。私はマイクロエンティティに該当しますので、出願料は1/4に減額されます。このため、出願費用は総額364ドル(日本円で57,146円)ですみました。
もし、アメリカに本人出願したいと考える猛者がいれば、私が調べた資料一式と出願書類をGoogleドライブで公開します。電子メールでその旨ご連絡下さい。ただし、私はサポートしません。本人出願は自己責任でお願いします。
また、この特許は10月20日までに優先権を主張してPCT出願する予定です。